住宅ローンを利用して家を購入するとき、「抵当権」という言葉を目にすることがあります。
しかし、初めて住宅ローンを利用する人にとっては、
「抵当権って何?」
「住宅ローンを借りるとなぜ抵当権が必要なの?」
「抵当権が設定されると自分の家ではなくなるの?」
「住宅ローンを完済したらどうなる?」
など、分からないことも多いのではないでしょうか。
抵当権とは、住宅ローンなどの返済ができなくなった場合に備えて、金融機関などが不動産を担保として確保するための権利です。
要するによく言う「担保」です。
住宅ローンを利用して家を購入しても、その家に住んだり、通常どおり生活したりすることができます。
ただし、住宅ローンを完済した後には、抵当権を抹消するための手続きが必要になります。
私は銀行の住宅ローンセンターで住宅ローン業務に携わってきました。
この記事では、その経験も踏まえて、
- 住宅ローンの抵当権とは何か
- なぜ金融機関が抵当権を設定するのか
- 抵当権設定登記とは何か
- 抵当権がある家を売却できるのか
- 住宅ローン完済後はどうするのか
について、住宅ローン初心者にも分かりやすく解説します。
住宅ローンの抵当権とは?
抵当権とは、住宅ローンなどのお金を借りる際に、不動産を担保とするために設定される権利です。
住宅ローンでは、金融機関から数千万円という大きな金額を借りることも珍しくありません。
金融機関としては、長期間にわたって多額のお金を貸すことになります。
そこで、住宅ローンの返済ができなくなった場合などに備えて、購入する土地や建物などに抵当権を設定するのが一般的です。
住宅ローンの返済ができなくなった場合、金融機関は一定の手続きを経て担保となっている不動産から債権を回収することになります。
つまり抵当権は、
住宅ローンを貸す金融機関にとって、万が一に備えるための重要な権利
と考えると分かりやすいでしょう。
抵当権が設定されると家は銀行のものになる?
抵当権について、
「住宅ローンを借りている間は、家は銀行のものなの?」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、抵当権が設定されたからといって、住宅の所有者が金融機関になるわけではありません。
住宅を購入して所有権を取得すれば、基本的に購入者がその住宅の所有者です。
金融機関は、その不動産に対して抵当権を持つことになります。
したがって、住宅ローンを返済している間でも、
- 自宅に住む
- 家具を置く
- 日常生活を送る
といった通常の利用ができます。
「抵当権がある=銀行が家を所有している」ではない
という点を覚えておきましょう。
なぜ住宅ローンでは抵当権を設定するの?
住宅ローンは、一般的に借入金額が大きく、返済期間も長いローンです。
たとえば、
借入金額4,000万円
返済期間35年
という住宅ローンなら、金融機関は非常に長い期間にわたって資金を貸すことになります。
もちろん金融機関は住宅ローン審査を行い、
- 年収
- 勤務状況
- 他の借入
- 信用情報
- 物件
など、さまざまな項目を確認します。
それでも将来何が起こるかを完全に予測することはできません。
そこで、住宅ローンの対象となる不動産などを担保として確保するために、抵当権を設定します。
抵当権設定登記とは?
住宅ローンを利用するときには、抵当権について登記を行うのが一般的です。
これを、
「抵当権設定登記」
といいます。
不動産登記によって、
「この不動産には、この金融機関の抵当権が設定されている」
ということが公示されます。
住宅購入の決済時には、
- 所有権移転登記
- 抵当権設定登記
などが行われることがあります。
これらの登記手続きは、司法書士が行うケースが一般的です。
抵当権設定登記には費用がかかる
抵当権設定登記には費用がかかります。
主なものとして、
- 登録免許税
- 司法書士報酬
などがあります。
そのため、住宅購入時には物件価格や住宅ローンの頭金だけを考えればいいわけではありません。
登記費用なども含めた住宅購入の諸費用を準備しておく必要があります。
住宅ローンを検討するときは、
「いくら借りるか」だけではなく、「購入時に現金がいくら必要になるか」
も確認しておきましょう。
抵当権と根抵当権は何が違う?
「抵当権」と似た言葉に、
「根抵当権」
があります。
この2つは同じものではありません。
抵当権は、特定の債権を担保するために設定されるものです。
一方、根抵当権は、あらかじめ定めた極度額の範囲内で、一定の継続的な取引から発生する債権を担保するために利用されるものです。
一般的な住宅ローンを利用する人であれば、まずは、
「住宅ローンでは購入する不動産などに抵当権が設定されることがある」
と理解しておけばよいでしょう。
住宅ローンを返せなくなったらすぐ家を取られる?
抵当権があるからといって、
「住宅ローンを1回払えなかったら、すぐに家を取られる」
という単純なものではありません。
住宅ローンの返済が難しくなった場合には、状況に応じて金融機関との相談などが行われることがあります。
しかし、返済できない状態が続けば、最終的に担保となっている不動産が競売などの対象となる可能性があります。
そのため、住宅ローンの返済が厳しくなってきたと感じたら、問題を放置しないことが重要です。
返済が完全にできなくなる前に金融機関へ相談する
ことを考えましょう。
抵当権がついている家は売却できる?
住宅ローン返済中に、
「転勤することになった」
「家族構成が変わった」
「もっと広い家へ住み替えたい」
などの理由から、自宅を売却したくなることもあるでしょう。
住宅ローン返済中で抵当権が設定されている住宅でも、売却を進めること自体は可能です。
ただし、通常は売却時に住宅ローンを完済し、抵当権を抹消できるようにする必要があります。
たとえば、
住宅ローン残高:3,000万円
住宅売却価格:4,000万円
なら、売却代金から住宅ローンを完済できる可能性があります。
一方、
住宅ローン残高:3,000万円
住宅売却価格:2,500万円
だった場合には、
500万円不足
します。
このような状態では、売却代金だけでは住宅ローンを完済できません。
不足する資金をどうするのかを検討する必要があります。
住宅ローン返済中に家を売却するときは、
「いくらで売れそうか」だけではなく「現在の住宅ローン残高はいくらか」
も重要になります。
住宅ローンを完済すると抵当権は自動的に消える?
ここは特に注意したいポイントです。
住宅ローンをすべて返済すると、住宅ローンに基づく債務はなくなります。
しかし、登記簿上の抵当権の記録が自動的に消えるわけではありません。
住宅ローン完済後には、金融機関から抵当権抹消に必要な書類などを受け取り、抵当権抹消登記を行います。
「住宅ローンを完済したから何もしなくていい」
と考えないようにしましょう。
抵当権抹消登記は自分でもできる?
抵当権抹消登記は、自分で手続きを行うこともできます。
一方、
「登記手続きがよく分からない」
「平日に手続きをする時間がない」
といった場合には、司法書士へ依頼する方法もあります。
司法書士へ依頼すれば報酬がかかりますが、必要な手続きを任せることができます。
自分で手続きするか司法書士へ依頼するかは、手間や費用などを考えて判断するとよいでしょう。
抵当権を抹消しないまま放置するとどうなる?
住宅ローンを完済した後も抵当権抹消登記をしなければ、登記簿上には抵当権の記録が残った状態になります。
そのまま長期間放置すると、
- 将来住宅を売却するとき
- 相続が発生したとき
- 必要書類を紛失したとき
などに、手続きが複雑になる可能性があります。
住宅ローンを完済したら、金融機関から受け取った書類をそのまま長期間放置せず、抵当権抹消登記について確認することをおすすめします。
住宅ローン借り換えの場合、抵当権はどうなる?
住宅ローンを別の金融機関へ借り換える場合にも、抵当権が関係します。
一般的には、
現在の住宅ローンを完済
↓
現在の金融機関の抵当権を抹消
↓
借り換え先金融機関の抵当権を設定
という手続きが必要になります。
そのため住宅ローンの借り換えでは、金利だけを比較するのではなく、
- 抵当権抹消登記
- 抵当権設定登記
- 司法書士報酬
- その他の借り換え費用
なども含めて考える必要があります。
「金利が下がる=必ず借り換えた方が得」
とは限りません。
借り換えに必要な諸費用まで含めて判断しましょう。
抵当権について確認しておきたい5つのポイント
住宅ローンを利用する人は、次の5つを覚えておくとよいでしょう。
- 抵当権が設定されても住宅の所有者が銀行になるわけではない
- 住宅ローンでは不動産に抵当権を設定するのが一般的
- 抵当権設定登記には費用がかかる
- 住宅売却時には住宅ローン残高と売却価格の確認が重要
- 住宅ローン完済後は抵当権抹消登記を確認する
特に5つ目は、住宅ローンを完済したときに忘れやすいポイントです。
元銀行住宅ローンセンター担当として伝えたいこと
「抵当権」という言葉は難しく感じるかもしれません。
しかし、住宅ローンを利用する人にとっては非常に身近なものです。
まず理解しておきたいのは、
「抵当権が設定される=家が銀行のものになる」
という意味ではないことです。
住宅ローンを通常どおり返済していれば、自宅として生活できます。
一方で、住宅ローンを完済したときや住宅を売却するときには、抵当権に関する手続きが必要になります。
住宅ローンを借りるときだけではなく、
借りる → 返済する → 売却・借り換え → 完済する
という住宅ローンのさまざまな場面で関係するものです。
専門的な登記手続きについて分からないことがあれば、金融機関や司法書士などに確認しましょう。
よくある質問
Q.抵当権が設定されると家は銀行のものになりますか?
いいえ。
抵当権が設定されたからといって、金融機関が住宅の所有者になるわけではありません。
Q.住宅ローンを完済すれば抵当権は自動的に消えますか?
住宅ローンを完済しても、登記簿上の抵当権の記録が自動的に消えるわけではありません。
抵当権抹消登記の手続きが必要です。
Q.抵当権がある家は売却できますか?
売却を進めることは可能ですが、通常は売却時に住宅ローンを完済し、抵当権を抹消できるようにする必要があります。
住宅ローン残高が売却代金を上回る場合には、不足資金についても検討する必要があります。
Q.抵当権抹消登記は自分でできますか?
自分で行うこともできます。
手続きに不安がある場合には司法書士へ依頼する方法もあります。
Q.住宅ローンを借り換えると抵当権はどうなりますか?
一般的には、現在の金融機関の抵当権を抹消し、借り換え先金融機関の抵当権を新たに設定します。
まとめ|抵当権は住宅ローンを理解するうえで重要な仕組み
抵当権とは、住宅ローンなどの返済ができなくなった場合に備えて、金融機関などが不動産を担保として確保するための権利です。
住宅ローンを利用すると、購入する土地や建物などに抵当権を設定するのが一般的です。
ただし、
抵当権が設定される=住宅が銀行の所有物になる
という意味ではありません。
また、住宅ローンを完済したら、
抵当権抹消登記
についても確認する必要があります。
住宅ローンを利用するなら、
抵当権設定 → 住宅ローン返済 → 完済 → 抵当権抹消
という一連の流れを理解しておきましょう。
難しく感じる登記手続きについては、金融機関や司法書士などの専門家へ確認することも大切です。


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