住宅ローンの本審査に通り、住宅ローン契約まで終わると、
「もう住宅ローンは確定したから安心」
「車のローンを組んでも大丈夫だろう」
「転職しても問題ないのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、住宅ローン契約が終わったことと、実際に住宅ローンのお金が融資されたことは同じではありません。
住宅ローンでは一般的に、本審査承認後に住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)を行い、その後、決められた日に融資が実行されます。
つまり住宅ローン契約後であっても、融資実行前であれば、まだ手続きの途中です。
私は銀行の住宅ローンセンターで住宅ローン業務に携わってきました。
この記事では、その経験も踏まえて、
- 住宅ローン契約後に注意すること
- 融資実行前に新しいローンを組んでもいいのか
- 転職や退職をしてもいいのか
- クレジットカードを使ってもいいのか
- 融資実行までに確認しておきたいこと
について、初心者にも分かりやすく解説します。
住宅ローン契約後でも融資実行までは手続きが終わっていない
まず理解しておきたいのが、住宅ローン契約と融資実行の違いです。
住宅ローンでは一般的に、
事前審査
↓
本審査
↓
本審査承認
↓
住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)
↓
融資実行
↓
物件の引き渡し
という流れで手続きが進みます。
実際の手続きの順番や方法は、金融機関や取引内容などによって異なる場合があります。
住宅ローン契約まで終わると、大きな山を越えたように感じるかもしれません。
しかし、金融機関から実際にお金が融資されるのは「融資実行日」です。
そのため、
「住宅ローン契約が終わったから、もう何をしても大丈夫」
とは考えない方がいいでしょう。
特に、申込時や審査時の前提を大きく変える行動には注意が必要です。
住宅ローン契約後・融資実行前にやってはいけないこと5選
①新たに大きなローンを組む
住宅ローン契約後であっても、融資実行前に新しい借入を増やすことは慎重に考えましょう。
代表的なのが、
- 自動車ローン
- カードローン
- フリーローン
- 高額商品の分割払い
- クレジットカードのキャッシング
などです。
住宅ローン審査では、住宅ローン以外の借入状況や返済負担なども確認されます。
そのため、審査時にはなかった借入が新たに増えれば、審査時の状況とは変わってしまいます。
私のお客様にも
「住宅ローンの契約が終わったから、新居に合わせて車をローンで購入しよう」
と考える方がいらっしゃいました。
しかし、住宅ローンの融資実行前なら、自己判断で自動車ローンを組むのではなく、住宅ローンを利用する金融機関へ事前に確認することをおすすめします。
住宅ローン契約後であっても、
「融資実行までは新たな借入を増やさない」
と考えておくと分かりやすいでしょう。
②金融機関に相談せず転職・退職する
住宅ローン契約後から融資実行までの転職や退職にも注意が必要です。
住宅ローン審査では、
- 勤務先
- 雇用形態
- 勤続年数
- 年収
などが審査材料になります。
たとえば本審査時には、
「A社勤務・勤続10年・年収600万円」
だった人が、融資実行前に退職すれば、審査時の前提となっていた状況が変わります。
もちろん、
転職しただけで必ず住宅ローンが利用できなくなる
とは言えません。
転職理由や新しい勤務先、収入、金融機関の基準などによって取り扱いは異なります。
しかし、
「もう契約したのだから、金融機関には言わなくてもいいだろう」
と自己判断するのは避けましょう。
住宅ローンの融資実行前に転職や退職の予定がある場合は、事前に金融機関へ相談することが重要です。
③クレジットカードのキャッシングやリボ払いを増やす
住宅を購入すると、
- 家具
- 家電
- エアコン
- カーテン
- 照明
- 引っ越し
など、さまざまなお金が必要になります。
そのため、
「とりあえずクレジットカードのリボ払いにしよう」
「現金が足りないからキャッシングしよう」
と考えることもあるかもしれません。
しかし、住宅ローンの融資実行前に新たな借入を増やすのは慎重に判断した方がいいでしょう。
特にキャッシングは借入です。
リボ払いや分割払いについても、利用状況によっては返済負担が増えることになります。
一方で、
住宅ローン契約後はクレジットカードを一切使ってはいけない
という意味ではありません。
普段の買い物や公共料金などをクレジットカードで支払うことまで過度に心配する必要はないでしょう。
大切なのは、
融資実行前に新しい借入や返済負担を安易に増やさないこと
です。
家具や家電などを購入する予定がある場合は、資金計画も含めて慎重に進めましょう。
④ローンやクレジットカードの支払いを延滞する
住宅ローン契約後も、各種支払いの管理はしっかり行いましょう。
たとえば、
- クレジットカード
- 自動車ローン
- カードローン
- 携帯電話端末の分割払い
- その他のローン
などです。
「住宅ローンの本審査には通ったから、もう信用情報は関係ない」
と考えるのは避けた方がいいでしょう。
支払いが遅れたからといって、それだけで必ず住宅ローンの融資が受けられなくなるとは限りません。
しかし、融資実行を控えている時期に、わざわざ支払い上の問題を発生させる必要はありません。
住宅購入前後は、
- 手付金
- 諸費用
- 引っ越し代
- 家具・家電
- 保険料
など、多くのお金が動きます。
普段より口座残高が大きく変動しやすいため、クレジットカードやローンの引き落とし口座の残高不足には特に注意しましょう。
⑤住宅購入の資金計画を勝手に大きく変更する
最後に注意したいのが、資金計画の変更です。
住宅ローン審査では、
- 物件価格
- 住宅ローン借入額
- 自己資金
- 諸費用
- 購入物件
などをもとに手続きを進めています。
ところが融資実行前に、
「予定していた自己資金を別のことに使った」
「住宅ローンの借入額を変えたい」
「購入内容が変わった」
など、当初の資金計画から大きな変更が生じる場合があります。
住宅購入では何百万円、何千万円というお金が動くため、ちょっとした変更に見えても住宅ローンの手続きに影響する可能性があります。
特に、
住宅購入に使う予定だった自己資金を別の大きな買い物に使う
といった行動には注意しましょう。
資金計画や申込内容に変更が生じた場合は、自分だけで判断せず、金融機関や必要に応じて不動産会社などへ確認してください。
「住宅ローン契約をしたのだから銀行は必ず融資する」は危険
住宅ローン契約まで終わると、
「銀行との契約が成立したのだから、融資はもう確定している」
と考えたくなるかもしれません。
しかし、住宅ローンの契約内容にはさまざまな条件が定められています。
契約後から融資実行までに重大な事情の変更などがあれば、予定どおり手続きが進まない可能性もあります。
具体的な取り扱いは契約内容や金融機関によって異なります。
そのため、
「契約したから何をしても問題ない」
ではなく、
「実際に融資が実行されるまでは住宅ローン手続きの途中」
と考えておく方がいいでしょう。
本審査承認後と住宅ローン契約後では何が違う?
初心者には少し分かりにくいので整理しておきます。
本審査承認
金融機関が住宅ローンの審査を行い、一定の条件のもとで融資可能と判断した段階です。
住宅ローン契約
借主と金融機関との間で住宅ローンの契約を行う段階です。
金銭消費貸借契約、略して「金消契約」と呼ばれることもあります。
融資実行
金融機関から実際に住宅ローンの資金が交付される段階です。
住宅購入では融資実行と物件の残代金決済・引き渡しなどが同日に行われるケースがあります。
つまり、
本審査承認
→住宅ローン契約
→融資実行
はそれぞれ別の段階です。
住宅ローン契約が終わっても、融資実行までは注意して行動しましょう。
住宅ローン契約後に家具・家電を買っても大丈夫?
家具や家電を購入すること自体が問題になるわけではありません。
注意したいのは、その購入によって新しい借入を増やしたり、住宅購入に必要な自己資金を大きく減らしたりする場合です。
たとえば、
「冷蔵庫をクレジットカードで一括購入する」
ことと、
「家具・家電100万円分を新たなローンで購入する」
ことでは状況が異なります。
また、現金で購入するとしても、決済日に必要な自己資金まで使ってしまえば住宅購入そのものに支障が出ます。
新居の家具や家電を早く揃えたくなる気持ちは分かりますが、決済・引き渡しまでに必要なお金を確保したうえで購入することが重要です。
融資実行前に転職が決まってしまったら?
すでに転職することが決まってしまった場合は、金融機関へ相談しましょう。
重要なのは、
「言うと住宅ローンが利用できなくなるかもしれないから黙っておこう」
と考えないことです。
勤務先などは住宅ローン審査の重要な申込情報の一つです。
転職した場合や転職予定が生じた場合の取り扱いは金融機関によって異なるため、できるだけ早く相談することが大切です。
融資実行までに確認しておきたい5つのこと
住宅ローン契約が終わったら、融資実行日に向けて次の点も確認しておきましょう。
1.融資実行日
売買代金の決済日や物件引き渡し日との関係を確認します。
2.自己資金
決済日に必要な自己資金が口座などに準備できているか確認します。
3.諸費用
登記費用、住宅ローン関係費用、仲介手数料など、支払いが必要な金額を確認します。
4.必要書類
金融機関、不動産会社、司法書士などから案内された書類に不足がないか確認します。
5.振込方法など
売主への残代金などがどのように支払われるのか、事前に確認しておきましょう。
直前になって慌てないためにも、分からないことは早めに確認しておくことが重要です。
元銀行住宅ローンセンター担当として伝えたいこと
住宅ローンの手続きでは、本審査に通過すると大きな安心感が生まれます。
さらに住宅ローン契約まで終われば、
「これでもう大丈夫」
と思うのも自然でしょう。
しかし、住宅購入で本当に大切な区切りの一つは、予定どおり融資が実行され、決済・引き渡しまで完了することです。
そのため住宅ローン契約後も、融資実行までは、
新しい借入を増やさない
転職や退職など大きな変更があれば金融機関へ相談する
支払いを遅らせない
決済に必要な自己資金を確保する
といった基本を守ることが大切です。
特別に難しいことをする必要はありません。
「審査・契約時の状況を融資実行まで大きく変えない」
と考えておけば分かりやすいでしょう。
よくある質問
Q.住宅ローン契約後に自動車ローンを組んでも大丈夫ですか?
自己判断で組むのは避け、住宅ローンを利用する金融機関へ事前に確認することをおすすめします。
新たな自動車ローンによって借入状況や返済負担が変わるためです。
Q.住宅ローン契約後にクレジットカードを使ってはいけませんか?
通常の買い物などでクレジットカードを利用することまで過度に心配する必要はありません。
ただし、キャッシングや多額のリボ払いなど、新たな借入や返済負担を増やす行動には注意しましょう。
Q.融資実行前に転職したら住宅ローンは取り消されますか?
転職しただけで必ず住宅ローンが利用できなくなるとは言えません。
金融機関や転職内容、収入などによって取り扱いが異なります。
転職が決まった場合は、できるだけ早く住宅ローンを利用する金融機関へ相談しましょう。
Q.住宅ローン契約後なら本審査はもう終わっていますか?
一般的には本審査承認後に住宅ローン契約へ進みます。
ただし、契約後も融資実行までは手続きが続きます。
契約時の条件や状況に大きな変更が生じた場合などには、金融機関への確認が必要になることがあります。
Q.融資実行前に家具や家電を買っても大丈夫ですか?
購入そのものが問題になるわけではありません。
ただし、新しいローンやキャッシングなどを利用したり、決済に必要な自己資金を使ってしまったりしないよう注意しましょう。
まとめ|住宅ローン契約後も融資実行までは慎重に行動しよう
住宅ローン契約が終わると安心してしまいがちですが、まだ住宅ローンの資金が実際に融資されたわけではありません。
住宅ローン契約後・融資実行前に特に注意したいのは、次の5つです。
- 新たに大きなローンを組む
- 金融機関に相談せず転職・退職する
- キャッシングやリボ払いを増やす
- ローンやクレジットカードの支払いを延滞する
- 住宅購入の資金計画を勝手に大きく変更する
住宅ローン契約後は、
「もう審査が終わったから何をしても大丈夫」
ではなく、
「融資実行までは住宅ローン手続きの途中」
と考えておきましょう。
そして、勤務先、借入、自己資金などに大きな変更が生じる場合には、自己判断せず金融機関へ確認することが大切です。
予定どおり融資実行・決済・引き渡しを迎えるまで、申込時や契約時の状況をできるだけ大きく変えずに進めていきましょう。


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