「自営業だと住宅ローン審査は厳しい?」
「個人事業主になってまだ数年だけど住宅ローンは組める?」
「売上は多いのに、なぜ希望する金額を借りられないの?」
自営業・個人事業主の方が住宅を購入するとき、このような疑問を持つことも多いと思います。
結論からいうと、自営業・個人事業主でも住宅ローンを組むことは可能です。
ただし、会社員とは収入の確認方法が異なるため、住宅ローン審査で確認されるポイントにも違いがあります。
特に重要なのが、確定申告の内容です。
自営業・個人事業主の場合、「売上がいくらあるか」だけではなく、申告している所得や事業の継続性、既存の借入などを含めて審査されます。
私は銀行の住宅ローンセンターで住宅ローン業務を担当してきました。
この記事では、その経験も踏まえながら、
- 自営業・個人事業主でも住宅ローンを組めるのか
- 会社員との住宅ローン審査の違い
- 売上と所得のどちらが重要なのか
- 赤字の年がある場合はどうなるのか
- 開業して間もない場合は住宅ローンを組めるのか
- 審査前に確認しておきたいポイント
について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
- 自営業・個人事業主でも住宅ローンは組める?
- なぜ自営業・個人事業主の住宅ローン審査は厳しいといわれるの?
- 「売上」と「所得」は違う
- 節税しすぎると住宅ローン審査に影響することもある
- 何年分の確定申告書を確認される?
- 所得が毎年違う場合はどうなる?
- 所得が右肩上がりなら有利?
- 赤字の年があると住宅ローンは組めない?
- 開業して間もなくても住宅ローンは組める?
- 法人成りしたばかりの場合は?
- 自営業・個人事業主が住宅ローン審査で確認されやすいポイント
- 事業用の借入がある場合はどうなる?
- 自宅兼事務所を購入する場合は注意
- 自営業・個人事業主の住宅ローンで必要になる書類
- 自営業・個人事業主が住宅ローン審査前にやっておきたいこと
- 頭金を増やせば住宅ローン審査に通りやすくなる?
- 自営業者こそ「借りられる金額」と「返せる金額」を分けて考えよう
- 元銀行住宅ローンセンター担当者として伝えたいこと
- よくある質問
- まとめ|自営業・個人事業主でも住宅ローンは組める
自営業・個人事業主でも住宅ローンは組める?
自営業・個人事業主でも住宅ローンを組むことはできます。
「会社員でなければ住宅ローンは組めない」
ということはありません。
実際、自営業者や個人事業主を住宅ローンの対象としている金融機関はあります。
ただし、会社員と自営業者では収入の確認方法が異なります。
会社員の場合は、一般的に源泉徴収票などによって給与収入を確認します。
一方、自営業・個人事業主の場合には、確定申告書や納税証明書などを使って収入や所得を確認します。
そのため、自営業だから住宅ローンを組めないのではなく、自営業には自営業の審査方法があると考えると分かりやすいでしょう。
なぜ自営業・個人事業主の住宅ローン審査は厳しいといわれるの?
住宅ローンは、20年、30年、35年など長期間にわたって返済するケースが多いローンです。
金融機関としては、
「今後も継続して住宅ローンを返済できるか」
を確認する必要があります。
会社員の場合、毎月一定額の給与を受け取る人が多いため、年間収入を把握しやすいという特徴があります。
一方、自営業・個人事業主の場合には、
- 売上が毎年変動する
- 利益が年によって変わる
- 景気の影響を受ける
- 取引先の状況によって収入が変わる
といったことがあります。
そのため、直近1年間だけを見るのではなく、複数年の確定申告内容などを確認される場合があります。
「売上」と「所得」は違う
自営業・個人事業主の住宅ローン審査で特に理解しておきたいのが、売上と所得は違うということです。
たとえば年間売上が1,000万円あったとしても、その1,000万円すべてを自由に使えるわけではありません。
事業を行うために、
- 仕入代金
- 外注費
- 広告費
- 通信費
- 交通費
- 家賃
- 消耗品費
など、さまざまな経費がかかります。
仮に、
売上 1,000万円
必要経費 600万円
なら、単純化すると所得は400万円です。
住宅ローン審査では、「売上1,000万円だから年収1,000万円の会社員と同じ」とは考えないことが重要です。
節税しすぎると住宅ローン審査に影響することもある
自営業・個人事業主の場合、税負担を抑えるために必要経費を適切に計上することは当然です。
ただし、住宅ローンを検討するときには注意したい点があります。
経費を計上して申告所得が小さくなれば、住宅ローン審査上確認される所得も小さくなる可能性があるためです。
たとえば、
売上1,000万円
所得300万円
という確定申告をしている人が、
「実際には売上が1,000万円あるから、年収1,000万円として住宅ローンを審査してほしい」
と考えても、そのように審査されるとは限りません。
住宅ローンを近いうちに利用する予定がある場合には、確定申告上の所得が住宅ローン審査にも関係することを理解しておきましょう。
もちろん、住宅ローンを借りるために経費を不適切に計上したり、所得を実態と異なる内容で申告したりしてはいけません。
正しい確定申告を行うことが大前提です。
何年分の確定申告書を確認される?
必要となる確定申告書や納税証明書の年数は金融機関によって異なります。
自営業・個人事業主の場合、複数年分の収入・所得状況を確認されるケースがあります。
これは、
「直近1年だけたまたま利益が多かったのではないか」
「継続して同程度の所得を得られているか」
などを見るためです。
そのため住宅ローンを検討している場合には、直近の確定申告だけではなく、過去数年分の確定申告書類も整理しておくといいでしょう。
所得が毎年違う場合はどうなる?
自営業では、
1年目 所得500万円
2年目 所得400万円
3年目 所得600万円
のように、毎年所得が変わることは珍しくありません。
この場合、どの金額を住宅ローン審査上の所得として扱うかは金融機関によって異なります。
複数年の平均などを参考にするケースもあれば、直近の所得や推移を含めて判断するケースもあります。
そのため、
「3年間の平均が必ず審査年収になる」
などと一律に考えない方がいいでしょう。
重要なのは、複数年にわたって安定した所得を確保できているかです。
所得が右肩上がりなら有利?
たとえば、
1年目 300万円
2年目 400万円
3年目 500万円
と所得が増えている場合、
「今年は500万円だから、500万円を基準に住宅ローンを借りられる」
とは限りません。
反対に、
1年目 600万円
2年目 500万円
3年目 400万円
と減少している場合もあります。
住宅ローン審査では単年度の数字だけではなく、所得の推移について確認されることがあります。
どのように評価するかは金融機関によって異なるため、希望する金融機関に確認しましょう。
赤字の年があると住宅ローンは組めない?
自営業・個人事業主の場合、
「過去に赤字の年がある」
というケースもあるでしょう。
赤字だからといって、すべての金融機関で住宅ローンを利用できないと断定することはできません。
ただし、住宅ローンは長期間返済していくため、安定して返済できる所得があるかは重要です。
特に直近の申告が赤字だった場合には、住宅ローン審査に影響する可能性があります。
赤字になった理由が、
- 一時的な設備投資
- 開業直後の費用
- 売上減少
- 事業環境の変化
など、どのようなものだったのかも整理しておくといいでしょう。
開業して間もなくても住宅ローンは組める?
開業して間もない場合でも、住宅ローンを利用できる可能性はあります。
ただし、自営業者について「営業年数○年以上」などの申込条件を設けている住宅ローンもあります。
たとえば開業から半年の場合、そもそも確定申告を十分な回数行っていないこともあります。
そのため、利用できる金融機関が限られる可能性があります。
一方で、すべての金融機関が同じ基準というわけではありません。
開業前の職歴や現在の事業内容などを含めて確認される場合もあります。
開業して間もないからといって最初から諦めるのではなく、自営業者の取扱条件を金融機関ごとに確認することが重要です。
法人成りしたばかりの場合は?
個人事業主として事業を行った後、法人を設立するケースもあります。
この場合、
「会社を設立したばかりだから勤続年数はゼロなのか」
と疑問に思う人もいるでしょう。
個人事業から法人へ移行した経緯や、事業の継続性などについて確認される場合があります。
ただし、どのように審査するかは金融機関によって異なります。
法人成りして間もない場合には、
- 個人事業時代の確定申告書
- 法人の決算書
- 現在の給与
- 事業内容
など、何を提出する必要があるのか事前に確認しましょう。
自営業・個人事業主が住宅ローン審査で確認されやすいポイント
1.所得
まず重要なのが、確定申告上の所得です。
売上だけを見るのではなく、必要経費を差し引いた後の所得を確認しておきましょう。
2.所得の推移
直近1年だけではなく、複数年の所得推移を確認されることがあります。
3.事業年数
どの程度の期間、現在の事業を継続しているのかも確認される場合があります。
4.既存の借入
カードローンや自動車ローンなどの個人の借入だけでなく、事業に関係する借入についても申告や確認を求められる場合があります。
5.信用情報
会社員と同様に、住宅ローン審査では信用情報も重要です。
クレジットカードやローンの支払いを延滞しないようにしましょう。
事業用の借入がある場合はどうなる?
自営業・個人事業主の場合、事業のために融資を利用していることがあります。
たとえば、
- 設備資金
- 運転資金
- 自動車購入資金
- 開業資金
などです。
事業用借入があるからといって、それだけで住宅ローンを利用できなくなるわけではありません。
ただし、借入の内容や返済状況などについて確認される場合があります。
住宅ローン申込書で借入について申告を求められた場合には、正確に記載しましょう。
自宅兼事務所を購入する場合は注意
自営業者の場合、
「購入する住宅の一部を事務所や店舗として利用したい」
というケースもあります。
住宅ローンは基本的に本人や家族が居住する住宅を対象としたローンです。
自宅兼事務所・店舗について住宅ローンを利用できるかは、金融機関や商品によって条件が異なります。
居住部分と事業用部分の割合について条件が設けられている場合もあります。
そのため、自宅の一部を事業で使用する予定がある場合には、住宅ローンを申し込む前に金融機関へ伝えて確認することが重要です。
自営業・個人事業主の住宅ローンで必要になる書類
金融機関によって異なりますが、一般的には収入や納税状況を確認するための書類が必要になります。
たとえば、
- 確定申告書
- 納税証明書
- 本人確認書類
- 住民票など
- 物件に関する資料
などです。
審査内容によって追加資料を求められる場合もあります。
会社員と比べて収入確認書類が多くなることもあるため、住宅購入を考え始めた段階から過去の確定申告書などを整理しておくと手続きがスムーズです。
自営業・個人事業主が住宅ローン審査前にやっておきたいこと
1.過去の確定申告書を確認する
まず、自分の申告所得がいくらになっているのか確認しましょう。
「売上は分かるけれど所得は分からない」という状態は避けたいところです。
2.所得の推移を確認する
直近だけでなく、複数年の所得を並べて確認してみましょう。
3.借入を整理する
事業用・個人用を含めて、現在どのような借入があるのか整理します。
4.税金をきちんと納める
住宅ローン審査では納税状況を確認するための書類を求められる場合があります。
税金の未納がある場合には注意が必要です。
5.無理のない借入額を考える
自営業の場合、今後も毎年同じ所得になるとは限りません。
売上が減少する年があっても住宅ローンを返済できるよう、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。
頭金を増やせば住宅ローン審査に通りやすくなる?
頭金を増やせば住宅ローンの借入額を減らすことができます。
たとえば4,000万円の住宅を購入するとき、
頭金0円なら住宅ローン4,000万円、
頭金500万円なら住宅ローン3,500万円、
というように借入額を抑えられます。
借入額を減らすことで毎月の返済負担も小さくできます。
ただし、頭金を増やせば必ず審査に通るわけではありません。
また、自営業の場合には事業資金として現預金を確保しておくことも重要です。
住宅購入の頭金として預貯金を使いすぎて、事業の資金繰りが苦しくならないように注意しましょう。
自営業者こそ「借りられる金額」と「返せる金額」を分けて考えよう
これは会社員にも共通しますが、自営業・個人事業主の場合は特に重要です。
住宅ローン審査で4,000万円借りられるからといって、4,000万円借りるのが最適とは限りません。
自営業の場合には、
- 売上が減少する
- 取引先を失う
- 病気やケガで働けない
- 設備投資が必要になる
- 事業資金が必要になる
といった可能性も考えておく必要があります。
住宅ローンは長期間返済するものです。
事業の調子が良いときだけを基準にせず、売上や所得が下がったときでも返済できる金額なのかを考えておきましょう。
元銀行住宅ローンセンター担当者として伝えたいこと
自営業・個人事業主の方からすると、
「会社員じゃないから住宅ローンは難しい」
と感じるかもしれません。
しかし、自営業というだけで住宅ローンを諦める必要はありません。
大切なのは、
- 確定申告上の所得
- 所得の推移
- 事業の継続状況
- 既存借入
- 納税状況
- 住宅ローンの借入希望額
などを整理して、自分の状況に合った住宅ローンを探すことです。
また、金融機関によって自営業者に対する申込条件や審査方法は異なります。
一つの金融機関の結果だけで、
「自営業だから住宅ローンは無理だ」
と判断する必要はありません。
そして、自営業者の場合は住宅ローン返済だけでなく、事業を継続するためのお金も必要です。
住宅購入後の生活資金と事業資金の両方に余裕を持たせた資金計画を立てることが重要です。
よくある質問
Q.自営業でも住宅ローンは組めますか?
はい。自営業・個人事業主でも住宅ローンを組むことは可能です。
ただし、申込条件や審査方法は金融機関によって異なります。
Q.売上が1,000万円あれば年収1,000万円として審査されますか?
一般的に、売上と所得は別のものです。
自営業者の場合には確定申告書などをもとに所得を確認されるため、売上だけで住宅ローンの借入可能額を判断することはできません。
Q.確定申告は何年分必要ですか?
必要な年数は金融機関によって異なります。
複数年分の確定申告書や納税証明書などを求められることがあるため、事前に確認しましょう。
Q.赤字の年があると住宅ローンは組めませんか?
赤字があるからすべての住宅ローンを利用できないとは断定できません。
ただし、安定して返済できる所得があるかは重要な審査ポイントになるため、審査に影響する可能性があります。
Q.開業1年未満でも住宅ローンを組めますか?
金融機関によって条件が異なります。
営業年数について申込条件を設けている場合もあるため、開業して間もない場合には利用できる金融機関を確認しましょう。
Q.節税して所得を低くしていると住宅ローン審査に影響しますか?
確定申告上の所得が小さければ、住宅ローン審査上確認される所得にも影響する可能性があります。
住宅ローンを検討するときには、売上だけでなく自分が申告している所得も確認しておきましょう。
まとめ|自営業・個人事業主でも住宅ローンは組める
自営業・個人事業主だからといって、住宅ローンを諦める必要はありません。
ただし会社員とは収入の確認方法が異なり、
- 確定申告上の所得
- 複数年の所得推移
- 事業の継続状況
- 既存借入
- 納税状況
などを確認される場合があります。
特に覚えておきたいのが、「売上=住宅ローン審査上の年収」ではないということです。
住宅ローンを検討し始めたら、まず過去の確定申告書を確認し、自分の所得がどのように推移しているか整理してみましょう。
そして、住宅ローン審査に通る金額だけを見るのではなく、事業の売上が減った場合でも無理なく返済できる金額を考えることが重要です。
自営業・個人事業主だからこそ、生活資金だけでなく事業資金にも余裕を残し、長期間安心して返済できる住宅ローンを選びましょう。


コメント